2015.10.27

    天使館

    昨夜遅く、自宅最寄り駅の雑踏の中で舞踏家の笠井叡氏をお見かけした。その前の日もお見かけしました。二日続けてです。一昨日は日曜日でしたので自宅から駅まで歩くことにしました。不意に天使館(笠井氏の稽古場兼教室)のことを思いだし、散歩がてら少し遠回りになるが見に行きました。天使館には44年前(1971年)に一度行ったことがあるので場所は大体わかっています。ちょうど天使館前に辿り着いた時、外出のため笠井氏が出てきたのです。天使館とご自宅は建て替わっていました。
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    1971年の美術手帳には「昼は建築工事監督、夜は神秘学研究に従事」と紹介されています。たぶん笠井氏が設計と施工をされたと思われる建物はどこか氏の留学先のドイツの民家を思わせる恣意性のない押さえた表現のものでした。跳ね出した屋根の構造にもセンスを感じます。玄関ドアのレバーハンドルも堀商店製です。
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    44年前の天使館での公演は夜暗くなってから行われました。
    観客達は真っ暗な武蔵野の小道を無言で歩いて行きました。
    稽古場の床に座って開演を待っていますが、なかなか始まりません。誰もがどうなっているんだろうと感じ始めたころ、若い女性の観客が静かに立ち上がりました。舞踏が始まったのです。気が付くといつの間にか若い女性は一糸まとわぬ姿になっていました。会場は音ひとつしません。講演が終わると観客たちはまた無言で帰っていきました。当時17歳の高校生には何が行われたのか整理がつきませんでした。
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    その後、笠井叡氏の「聖霊舞踏」を読みましたが、これも理解不能でした。70年代の現代美術、芸術は私にとっては理解できないことがその特徴でした。その日の観客たちは何かを求めて集まったのでしょう。たぶん私も自分でさえ分からない何かを探し求めていたのでしょう。そんな今では感じることのない当時の気持ちを思い出させたのが二日続けてお見かけした笠井叡氏の姿でした。非日常的な感覚を呼び覚まさせる人だから「笠井叡は芸術家なんだな」と酔った頭で結論を出して、一日を終わりにしました。

    Posted at 11:12 | その他 |